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吉原はこんな所でございました [本]

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最近いくつか古本を買った。先日「秋山紀行」という本を読んだけど、こうした古い文化や当時の田舎の生活に興味を持つと、どうしたって人買や遊郭の話題は避けてはいられなくなる。などともっともな理由をつけるほどのことはないけど、ずいぶん前に(30年ほど?)この著者が話題になった時に読みたいと思いつつ、どうしてもというわけでもなくて手を出さずにいたもの。

内容は吉原の引手茶屋で60年を過ごした女将が、内側から吉原を綴ったもの。視点が違うので違和感を感じる人もいるだろうが、楼閣の一面を現わしているのは間違いのないところだろう。ちなみに以前いた川越にもかつての遊郭跡はあり、当時の建物がかつての雰囲気を感じさせる。他にも新宿や深川などなどがあるが、大きな神社、仏閣の裏手に遊郭があることが多いのは、現実的な理由があるにしても興味深い。

気になるのは遊郭とは貧しい地方の娘たちが親に売られ、希望も持てないままに年期明けを待ちながら若くして死んでいくような世界だったのか。確かに多くの花魁たちの一生は長くはなかったらしい。

だからといって不幸を一点に集めたようなところでもなく、中には「自分が家からいなくなることで、両親や兄弟の食いぶちを増やすことができ、多少なりとも金が入ることで親孝行にもなる。それにきれいな服を着て、毎日米が食えるし(普通は年に1度も食べられない)、綿の入った布団で寝ることもできる」と、仕事の苦労はあるにしても喜んでいた女郎も少なくなかったという。

こうした記述は今の常識からは想像もできないが、100年前まで遡らずともちょっと山の中に入れば飢饉になればそれまで食べていたアワやヒエも口にできず、集落全員が飢え死にして絶えたり、家といっても壁もなく畳もなく、まともな食器も綿入りの布団もないことは珍しいことではなかった。多くは木の皮や植物の皮を編んだものを服や布団の代わりとして、ボロボロになるまで使い倒していたのだ。

雪が数メートルも積もる真冬でも裸足で囲炉裏の周りで雑魚寝、ゴザがある家は立派な部類、着ている服を脱いで腹にかけて寝る。寝ていると隙間から雪が舞い込みうっすらと積もる、口べらしで赤ん坊がいなくなり、「神隠し」で一家まるまるいなくなることも珍しいことではなかった。そんなことが当たり前の世界だった時代、娘を売りに出すことは、親にしてみれば「50、60まで生きるのは稀な時代、少しでもいい思いをさせたい」という気持ちもあったんじゃなかろうか。

こんな記述は昔話じゃなくて、今住んでいるあたりの年寄りでも「藁にくるまって寝た」「藁のある家はいいけど、米が作れないところじゃ藁もない」「まきを燃やしている囲炉裏にあたっていると、頭から雪が降ってくる」「朝起きると顔の周りに雪が積もっていた」「この先にはまだ集落があったんだ。ある時一人残らずいなくなった」「木綿の服を初めて着た時にはなんと暖かい服があるものだと感じた。どうやって生きていたのかねぇ」と話してくれる。

古くからの家には必ず石臼が軒先にある。かつては毎日その石臼でアワ、ヒエ、木や草の実などを粉にして団子にしたり、雑炊にして食べのだ。今では想像すら出来ない話も、わずか半世紀前のこと。吉原が天国だったなどと言うつもりはないけど、現代人の常識で考えて、かわいそう、非人道的、男の身勝手などと簡単に判断することはできそうもない。
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minton

当時の人たちは今の人たちと精神構造がちょっと違っていて、家族愛が強いですよね。
性に対してもおおらかです。
僕も民俗学の本を読むのですが、あまり西洋化せずに昔の概念で生きていたら、日本はもっと違ってきたように思います。
核家族、個人主義など、便利にはなりましたが失ったものが多いです。
by minton (2017-04-01 12:17) 

川越

> mintonさま、こんにちは。年度が変わっても相変わらず忙しいようですね。

ところでかつて鎖国がとけて欧米から知識人たちが来て驚いたのは、「日本人(庶民)はお金もなく、粗末なものしか身につけていないのに、なんと楽しそうに暮らしていることか。誰もが子供の周りで笑っている」と、毎日の生活そのものを楽しんでいる姿だったそうです。

毎日家族が食べることだけを考えて日々働きに出る。働けなくなれば、文字通り消えていく。そんな単純な世界だったのかもしれません。

でも疑うことも知らず、来るものは拒まずでは、遠からず他の黄色人種や黒人たちの国のようになっていたかもしれません。

とはいえ便利になりすぎ、その「便利」を維持するために脇目も振らずに頑張り続けるのはどうなんだろうと思います。もっとも、そう思う人は少ないのかもしれません。
by 川越 (2017-04-01 13:48) 

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